「FWST-8艦隊戦争」の戦場レポート | EVE Online

「FWST-8艦隊戦争」の戦場レポート

2020-12-13 - 作者 CCP Convict

去る10月に公開した記事 において、「FWST-8艦隊戦争」と呼ばれるバトルの結果として、EVE Onlineで2つのギネス世界記録が認定されたことをご報告しました。記事では2016年に遡り、現在の紛争状態の前段階についてご紹介しています。

今回は「FWST-8艦隊戦争」そのものについて取り上げます。プレイヤーの皆さんがどれだけの労力をつぎ込んでこの記録破りのバトルを実現したのか、幾つかの統計をご紹介いたします。



目標


この戦争における敵対行為は、2020年7月5日にImperiumとLegacy Coalitionが結んでいた不可侵条約が終わりを迎えたことに端を発しています。条約が失効した直後、Legacy CoalitionはPandemic HordeやPandemic Legion、Northern Coalition、Winter Coalition、その他多くの味方(以後『PAPI』と記載)と共に、Imperium領域だったデルヴ、クエリアス、ピリオドベイシス、ファウンテンに向けて西進を開始しました。

ここからの3ヶ月間、PAPI軍はその支配領域を拡大し続けました。一方のImperiumは、PAPI軍による圧倒的物量に対し、広範囲に渡っていた自領全体に効果的な防衛作戦を展開できなかったものと思われ、戦略的措置として辺境リージョンから撤退し、ホームリージョンであるデルヴに防衛戦力を集中させていました。

そして10月4日、PAPIはついにImperiumの玄関口に到達します。

しかし、デルヴは防衛体制が厳重なリージョンでした。2016年以来、Imperiumは防衛インフラを構築し続けていました。フリートを作成するためのシタデルやエンジニアリング複合施設、精錬所の他、リージョン内を迅速に移動するためのプライベートなジャンプブリッジネットワークも作成しており、そしてもちろん、艦船やモジュール、弾薬についても大量に備蓄していたのです。Imperiumの裏庭では、厳しい戦いを強いられることになるはずでした。

PAPIがデルヴに攻め込むには、タイタンと大型艦載機母艦で構成されたスーパーキャピタルフリートによるサポートが不可欠でした。しかし当面の間、PAPIのスーパーキャピタルはImperiumの宙域の境界から動けない状況でした。ジャンプの範囲に限界がある以上、PAPIはある程度の戦力までしかデルヴに投入できません。そしてリージョン内には安全な宇宙港がなく、どこに展開するにせよ、Imperiumが擁する相当規模のスーパーキャピタルフリートの矢面に立たされ、交戦することになるでしょう。そのためPAPI軍の次なる戦略的ゴールは、前哨基地として、デルヴ内のどこかでキープスター級シタデルを稼働させることでした。

これは難題でした。何故なら、敵のインフラストラクチャハブが存在し、高いアクティビティ防衛乗数の影響を受けるシステム内で行う場合、キープスターの係留は長時間、ほぼ丸々1週間近くかかるからです。これはデルヴ内のImperiumが支配しているシステム全てに言えることです。そこでPAPIは、代わりにデルヴのコンステレーションである XPJ1-66-UCYU に目を付けました。なぜなら、このコンステレーション内のシステムはブラッドレイダーズというNPC勢力に支配されており、Imperiumのインフラストラクチャハブが存在していなかったからです。ここならたったの24時間でキープスターの係留を完了できます。

もちろん、これがPAPIにとって最も論理的かつ戦略的な行動であることはImperiumも承知しており、ブラッドレイダーズのシステム内にキープスターを設置する試みは激しい抵抗にあうことが予想されました。

PAPIは、10月5日の正午(UTC)直後に行動を起こすことにしました。目標に選ばれたシステムはFWST-8でした。

デルヴは97個の個別のソーラーシステムで構成されたリージョンです。スキルが最大レベルに達したタイタンは、最大6光年先まで自船かブリッジを利用可能なフリートをジャンプさせることができます。つまり、FWST-8に存在するキープスターを基地とするタイタンのフリートは、その戦力を69個以上のシステムに投入でき、これはデルヴの全リージョンの71%に上ります。Imperiumにとっては、何としてでも阻止しなくてはならない脅威です。

Imperium軍はPAPIによるキープスター係留の試みに対して迅速に反応し、最初の脆弱性ウィンドウの15分の間に攻撃を行えるよう急ごしらえの部隊を編成しました。5時間に及ぶ戦闘の末、Imperium軍は勝利し、キープスターは宇宙の藻屑と化しました。しかし、戦闘の余韻が消える間もなくPAPIが2個目のキープスターをシステム内の別の場所に展開し、係留プロセスを開始することに成功していました。次に攻撃可能となるのは24時間後で、その際に発生する戦闘こそがゲーム史上最大のPvPバトルとなりました。


戦闘


10月6日の16時34分、キープスターの係留タイマーが終了する1時間前、要撃型フリゲートとワープ妨害型駆逐艦の援護を受け、PAPI軍のT3駆逐艦、ジャックドーがグリッドに到着し始めました。その後間もなく、強襲型巡洋艦であるムニンのフリートが到着しました。

現地の人口は着実に増え続け、16時52分の時点で4,000人を突破。この時点で宙域最初の戦艦としてナイトメアのフリートが強襲型巡洋艦のイーグルと共に到着し、キープスター周辺に展開し始めました。グリッドを確保したPAPIはまもなく、キープスターの防衛フォーメーションの中心にスーパーキャピタルを加えます。

17時36分、現地の人口が6,000人を突破すると共に、キープスターの係留プロセスが完了しました。この時点でキープスターは修復タイマーフェーズに入り、再び攻撃可能な状態となりました。タイマーを止めてキープスターの破壊に着手するのに必要なダメージを与えるため、Imperiumに与えられた猶予はわずか15分です。

ほぼ直後に、Imperiumのロークとレイブンがグリッド内の指定宙域に到着し始め、防衛側の主力部隊の側面に回り込み、遠距離攻撃を浴びせんとしていた戦艦に加わりました。17時43分、Imperiumは残り時間を8分残し、修復プロセスを止めることに成功しました。

Imperiumの攻城艦と艦載機母艦が徐々に集結し始め、キープスターの構造のヒットポイントを削りきるのに必要なダメージ量がゆっくりと近づいて来ました。

数千人のプレイヤーが夜通し戦い続ける中、Imperiumの攻城艦はキープスターに破壊兵器を雨あられと撃ちこみ、一方のPAPIのタイタンはドゥームズデイ兵器を使い、Imperiumの攻城艦を撃ち払おうとしました。巨大艦同士が交戦する中、より規模の小さな小競り合いも大量に発生していました。小競り合いは、準キャピタル級フリート同士だけでなく、もっと規模が小さな個別のフリゲートや駆逐艦単位でも発生し、さらに時折、ステルス爆撃艦が現れ、乱戦となった戦場に爆撃を加えました。

翌日の5時27分、修復タイマーが停止してから11時間と44分が経過した頃、キープスターの構造のヒットポイントが削りきられ、ついに破壊されました。まばゆい閃光の中、キープスターは爆散。Imperiumは戦略目標を達成し、PAPIが重要な橋頭保であるキープスターをデルヴに築くには、再度の挑戦が必要な状況となりました。しかし、この作戦で両陣営ともに相当量の資源を消費し、勝利の代償は大きなものとなりました。

PAPIは最終的にキープスターをデルヴ内で起動させることに成功しましたが、これは4度目の正直でした。この時点までに、Imperiumはシステム319-3Dにおいて2個のキープスターを撃破しており、PAPIがキープスターの起動に成功したのはシステムYZ9-F6においてのことでした。


数字から見たFWST-8艦隊戦争


この戦闘中に達成されたギネス世界記録に関するニュースを追っている方なら、現地の最大同時接続キャラクター数が6,557人で、これを達成した時刻が18時16分であることをご存じでしょう。しかし、12時間に渡る戦闘中、システムの人口もまた尋常ではない数に到達していました。

戦闘中にFWST-8に存在していたユニークキャラクターは合計8,825人に上り、アライアンス数は何と114個、コーポレーションは1,022社という状況でした。

FWST-8における撃破数が非常に多かったことは驚くべきことではありませんが、単一の戦闘で失われた戦艦の数がEVE Online史上最多の1,308隻だったのに対し、興味深いことに、T2戦艦はそのうちわずか1隻だけでした。

なお、1,268隻のフリゲート、836隻の巡洋艦、574隻の巡洋戦艦、そして356隻の攻城艦がゲームから消え去り、1,923人が宇宙を漂う凍った遺体となっています。

以上に加え、大量のISKも投じられました。その額は7,050億ISKを超えます。

巨額の損失が発生したものの、これはEVEにおける最も損失額が大きなバトルではありません。今回はスーパーキャピタル同士の本格的な戦いが発生しなかったことを主な理由として、現時点での損失額が最も高かった戦闘は、2018年に起きた9-4RP2の包囲戦 となっています。

また当然のことですが、非常に多くのプレイヤーがシステムに集まったため、サーバーには大きな障害が発生しました。システムFWST-8は、最大級の処理能力を持つノードをさらに補強した状態でしたが、すぐに処理が追い付かなくなり、プレイヤーがシステムに一斉に乗り込み始めた直後に時間経過の遅延が設定されました。以後、戦闘全体に対して最大限の遅延が適用され続けました。

ニューエデンにおいて、記録とは破られる続けるものです。EVE Onlineのプレイヤーだけでなく、一般のゲーマーたちの興味もかきたてる、より大規模なバトル、より胸が躍る物語が生まれる紛争は毎年起きています。FWST-8艦隊戦争はゲームメディア全般だけでなく、一般のメディアにおいても報道されました。世界中の数百、数千万人の人々がプレイヤーの皆さんの偉業に胸を熱くしながら記事を読んでいますが、「自分もあの場にいた」と言えるのは、EVE Onlineのプレイヤーだけです。

戦場写真:Razorien氏提供
領有権マップ:Verite Rendition作成
ジャンプ範囲マップ:DOTLAN提供


世界中で報道された「FWST-8艦隊戦争」:

Guinness World Records - EVE Online’s record-breaking Fury at FWST-8

MMORPG - EVE Online Players Break Records With Largest PVP Battle In Gaming History

MassivelyOP - One of the largest PvP battles ever to occur in video game history’ just happened in EVE Online

PCGamesN - EVE Online space battle breaks two Guinness world records

Screen Rant - EVE Online Just Had The Largest PvP Battle In Gaming History

Bleeding Cool - EVE Online Has Broken Two Guinness World Records

The Gamer - EVE Online Just Broke Two Guinness World Records In One Day

Tech Gaming Report - EVE Online sets two Guinness World Records in the latest war

CBR - EVE Online Sets Two Guinness World Records With Latest War

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